大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)1863号 判決

被告人 大川貞治

〔抄 録〕

所論は、原審相被告人木村訓雄は本件窃盗の本犯であるのみならず、被告人は同人等と上京の途上始めて本件ラジオが盗品であることに気ずいたものであるから、この点において原判決には事実誤認の違法があると云うにある。しかし原判決が認めた事実はその挙示する証拠によつて十分に認められるところであつて、木村が窃盗の本犯であることは、当審以前の記録上何らこれを認めるに足る証拠はない。尤も当審における証人出口鉄男の供述によれば、右ラジオを窃取するに当り、木村訓雄もこれに共同加功した事実を認めうるようであり、あるいはこれが事実の直相ではないかと思われるのであるが、そのいずれにもせよ、被告人が本件ラジオを木村、出口、望月等より預つた当時、それが賍品であることを知つていたことは、それを預つたのが五月十三日午前五時頃であり、そのラジオは携帯ラジオ大型ラジオ合せて十台以上の数量に達し、全部包箱入のものであつたこと、これを持つて来たものが、出獄後間もない木村や、当時二十歳に過ぎない出口、十八歳に過ぎない望月の三名であつて、同人等がこれにつき正当な処分権限を有するものとは認め難いこと、同人等がそのラジオはあやしいものではないと云つたとしてもその出所等につき何ら詳細な説明をすることもなく被告人方に預けその売却を依頼したものであること、当審証人出口の供述によれば、被告人が売つてやつたラジオの代金の内同人等は小遣銭程度の金員を分与されて格別異議もとなえなかつたこと等の諸般の情況から見て明白であつて、被告人が当時賍品であることを知つていた旨の検察官に対する供述はその真実性を疑う余地はないのである。従つて、被告人が右三名より盗品たる情を知りながら本件ラジオを預り、判示のように清水市内および東京都内において売却の斡旋をしたことが認められる以上、被告人がこれにつき木村と共謀したと否とにかかわらず賍物牙保罪の責に任ずべきことは云うをまたない。故に当審証人出口鉄男が供述するように木村もまた右ラジオ窃盗の共犯者であり、従つて被告人が木村と共同して右ラジオ売却の斡旋をしたことについて、木村については賍物牙保罪の成立を論じえない場合であつたとしても、被告人については、被告人が関与した本件賍物の牙保行為については単独にその本犯として責に任ずべきものであり、原審がこの点について木村を窃盗本犯でないと誤認した結果、木村と共謀して賍物牙保罪を犯したものと認めた点において、事実の誤認があつたとしても、このような誤認は被告人の責任には何ら消長を来すものでなく判決に影響を及ぼすものでないと認めるのが相当である。

(坂井 山本長 荒川)

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